2007年10月4日木曜日

卒論

1-ⅳ 焦げ付きと被害の拡大

・焦げ付きの原因

住宅バブルの加速-ITバブル(2001)の崩壊と緩和的資金供給

アメリカでは、2001年のITバブル崩壊に対処すべく、金利が引き下げられ、これによって金融が緩和的な状況が作り出された。
アメリカの住宅価格は92年に底をつけ、少しずつ回復していたところであったが、この緩和によって住宅ローンを組むための資金が十分すぎるほどに準備された。
また、ファニーメイ、フレディマックなどの政府との結びつきの強い機関が住宅ローンに対して保証を与え、証券化に一役買っていたが、バブル崩壊後には住宅ローン担保証券を大量に発行するだけでなく、デリバティブを導入することにより安価な住宅ローンを可能にした。
これによってブームが加速されたと考えられる。

また加えて、市民がさらにローンを上積みしてしまうメカニズムが、当時のアメリカには存在した。
住宅ローン会社は、担保たる住宅価格の上昇分を追加で貸し出すホームエクイティ・ローンを取り扱い、これが急速に浸透したのである。
これにより、返済の破綻を先送りしたり、消費を拡大するものが現れ、潜在的なリスクが累積していった。
しかし政府はこの明らかに危険な制度を、何の規制もなく放置した。
それは、ITバブルによる資産の減少を住宅価格の上昇による資産の増加が吸収し、消費を支えていたからである。
こうした観点から見ると、政府も住宅バブルをあおっていたといえよう。

また、投機としての住宅投資が拡大していたこともバブルの拡大に一役買っていたと考えられる。
アメリカでは、他国とは異なり投機的な要素が強かった。
2005年時点で、アメリカ人が購入した住宅の約4割がセカンドハウスであり、その4割の内訳を見てみると余暇目的のものは1割強にとどまり、残りの三割弱が投資目的であったという報告もある。
要するに、購入住宅の3割弱は投機目的の「住宅ころがし」であったのだ。

さて、ここで具体的なローン商品に目を向けてみる。
サブプライムモーゲージのなかでも、問題を深刻化した要因と考えられるものがハイブリッド型ARMと呼ばれるものである。
ARM(アジャスタブル・レート・モーゲージ)とは、一年ごとに利子を変更する住宅ローンで、たいてい1年もの国債利回りに2~2.5%のスプレッドを上乗せするものであるが、ハイブリッド型ARMにあっては、借り入れからはじめの数年間は返済利子を抑えたり、またあるいは元本をのぞく利子支払いのみを行わせ、代わりに一定期間が過ぎたあとの返済利率が跳ね上がるというものである。
これによって、借り手は本質的な返済負担から目を背けることができた。
自らの返済能力を無視した借り入れを行うようになったのである。
これは逆の観点から見ると、貸し手すなわち住宅ローン会社による無理な貸し出しと見て取ることもできるし、実際そうであった。
住宅ローン会社はローン商品のリスクについて十分に説明せず、これらの貸し付けを行い、自らは証券化によりリスクを逃れたのである。

・被害の拡大(拡散)要因
低信用層への住宅ローン貸し出しがこれほどまでグローバルな問題に変貌した背景として、先の段落の最後に登場した「証券化」の手法が大きな役割を果たした。
ここでいう証券化とは、サブプライムローン債権を対象にしたものである。
これらの証券には、RMBS/CMO/CDOなどの種類があるが、詳しくは後の当該項目で説明する。
証券化されたサブプライムローンは、さらに加工・分類され、それぞれのニーズに応じた各種金融機関を中心に世界各地にばら撒かれた。
そうした手法自体は問題ではなかったが、アメリカでは住宅投資の増大に伴って証券市場が過熱した活況を呈しており、そこで生まれたバブルもサブプライム関連商品とともに各地に拡散していってしまった。
これを助長したのが、民間の格付け機関による格付けである。
彼らは、リスクを正しく評価できていなかった(サブプライムローン問題が表面化してくると、いっせいに関連商品の格付けを落とした)のみならず、そもそも格付けするのに適切な立場ではなかった。
というのも、収入を格付けする商品の発行元から収入を得る現行のシステムの下では、利益相反がおこることが懸念されるからである。
しかしそうした格付け機関はすでに市場で確固たる地位を築き上げており、こうした格付け機関の格付けを市場が信頼して取引がなされたため、サブプライムローンに関連した証券化商品はその本質的なリスクを認知されないまま広く世界にいきわたったのである。

3 件のコメント:

四天王 さんのコメント...

原因については、住宅市場冷え込み→サブプライムの延滞拡大、そして証券への波及の流れを採る。

四天王 さんのコメント...

被害の拡大

IMFはサブプライムローンに関連した損失は,市場全体でおよそ1700〜2000億ドルになる可能性があると発表した。
アメリカの住宅ローン残高は約1400兆円、このうち13%182兆円が サブプライムローンにあたる。このうち債務不履行は30%程度、約55兆円と見られる。
55兆円すべてが回収不能になるのではなく、融資残高の6割を回収できるとすると、実損は22兆円程度だろうと考えられ、やはりIMFの推計に近い値となる。

・米国
震源地である米国では,証券ではメリルリンチが54億ドル、銀行ではシティが19億ドル、モルガン・スタンレーなど投資銀行3行が25億ドル超のサブプライム関連損失を出しているように,銀行・証券ともに被害が大きい。
加えて,GDPを支える国内個人消費が減退する懸念が強く、ショックが実体経済面でも顕在化する恐れがあり,実質的なマイナスは今後も増大していくことが予想される。

・欧州
BNPバリパ傘下のファンドが解約凍結したことをきっかけに欧州でもサブプライム問題が注目を集めるようになったが、UBSが34億ドルの評価損を、またHSBCもサブプライム事業からの撤退により約9億5千万ドルの損失を計上しているように欧州でもサブプライム関連損失は大きかった。
このショックにより,拡大傾向にあった欧州経済が停滞するとする見方も出てきている。(新聞参考資料)
また、欧州ではかねてからインフレが懸念されており,利上げ圧力が高まっていたが,今回の騒動を受けて利上げは今のところ延期されており、これもサブプライムショックによる間接的マイナスと捉えられる。

・日本
サブプライム関連証券に限って言えば,日本の損失は軽微であった。
これは主として、日本の銀行がリスクに対して慎重な姿勢をとっており,リスクの高い証券化商品をそれほど購入していなかったことによる。
メガバンクを見ても,各行の損失額見積もりは数億〜数十億円規模にとどまり,全投資に対する比率は少ない。(資料が欲しい)
しかし日本には特有のマイナス要因があった。
それは円キャリー取引の解消である。
円キャリー取引とは,金利の安い円を借りて外国為替あるいは株式投資等より高い利回りの望める資産で運用し、利益を上げるというものであったが,これがサブプライムショックを受けて一挙に解消され、それまでの円安から大幅に円高化が進んだ。
この結果,好調だった輸出産業を中心に業績見通しが下方修正され、株価も低迷した。
また、現在の超低金利体制を脱却しようとする日銀の利上げにも悪影響を及ぼし,結局問題発生から(10月)現在に至るまで利上げは見送られている。

四天王 さんのコメント...

被害の拡大

IMFはサブプライムローンに関連した損失は,市場全体でおよそ1700〜2000億ドルになる可能性があると発表した。
アメリカの住宅ローン残高は約1400兆円、このうち13%182兆円が サブプライムローンにあたる。このうち債務不履行は30%程度、約55兆円と見られる。
55兆円すべてが回収不能になるのではなく、融資残高の6割を回収できるとすると、実損は22兆円程度だろうと考えられ、やはりIMFの推計に近い値となる。

・米国
震源地である米国では,証券ではメリルリンチが54億ドル、銀行ではシティが19億ドル、モルガン・スタンレーなど投資銀行3行が25億ドル超のサブプライム関連損失を出しているように,銀行・証券ともに被害が大きい。
加えて,GDPを支える国内個人消費が減退する懸念が強く、ショックが実体経済面でも顕在化する恐れがあり,実質的なマイナスは今後も増大していくことが予想される。

・欧州
BNPバリパ傘下のファンドが解約凍結したことをきっかけに欧州でもサブプライム問題が注目を集めるようになったが、UBSが34億ドルの評価損を、またHSBCもサブプライム事業からの撤退により約9億5千万ドルの損失を計上しているように欧州でもサブプライム関連損失は大きかった。
このショックにより,拡大傾向にあった欧州経済が停滞するとする見方も出てきている。(新聞参考資料)
また、欧州ではかねてからインフレが懸念されており,利上げ圧力が高まっていたが,今回の騒動を受けて利上げは今のところ延期されており、これもサブプライムショックによる間接的マイナスと捉えられる。

・日本
サブプライム関連証券に限って言えば,日本の損失は軽微であった。
これは主として、日本の銀行がリスクに対して慎重な姿勢をとっており,リスクの高い証券化商品をそれほど購入していなかったことによる。
メガバンクを見ても,各行の損失額見積もりは数億〜数十億円規模にとどまり,全投資に対する比率は少ない。(資料が欲しい)
しかし日本には特有のマイナス要因があった。
それは円キャリー取引の解消である。
円キャリー取引とは,金利の安い円を借りて外国為替あるいは株式投資等より高い利回りの望める資産で運用し、利益を上げるというものであったが,これがサブプライムショックを受けて一挙に解消され、それまでの円安から大幅に円高化が進んだ。
この結果,好調だった輸出産業を中心に業績見通しが下方修正され、株価も低迷した。
また、現在の超低金利体制を脱却しようとする日銀の利上げにも悪影響を及ぼし,結局問題発生から(10月)現在に至るまで利上げは見送られている。